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「旅のラゴス」考察・感想編

2020年3月12日

目次

旅のラゴス

20年以上前に発売された本ですが、口コミで話題沸騰しており、多くの書店で並べられています。
題名の通り、旅をする物語ですが、SF要素が幾つもあり、休日のひとときに、気軽にタイムトラベルできる素敵な一冊です!ドネルの正体など考察させていただいてます!

作家紹介

筒井康隆
生 誕:1934年9月24日
出 身:大阪府大阪市
小説家、劇作家、俳優として幅広く活躍されてます。「SF御三家」の一人と称されることもあるそうです。今回紹介作品も「SF」要素満載の内容となっています!

あらすじ

『旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ。それを放棄することはできないんだよ。そして、君をつれて行くこともできない。』

『ご先祖が残していったという本を読ませてもらいに来たのさ。』

それを求め南方の地へ旅に出たラゴス。道中では、「同化」、「集団転移」、「壁抜け」といった特殊を持った人との交流や、運命の人「デーデ」との出会い、銀鉱山で奴隷なってしまうといった様々な体験をしながら、辿り着いた地には先祖の叡智が存在した。その地で、地位名声財産すべてを手に入れ、目的を果たせた筈のラゴスだったが再び旅に出るのだった。故郷への思い、デーデへの想いを胸に。デーデと過ごした村に彼女の姿はなかった。その後も旅を続け、山賊に追われ、奴隷商人に捕まりながらも、故郷にたどり着き、南方で得たものを還元しながら過ごしたのち、「氷の女王」という伝説の人物の姿にデーデを映して、再び最北の地へ、老齢の身で旅に出かけたのだった。死を恐れることなく。

『このキテロ市に、わたしは帰郷したのではなかった。実は旅の途中に寄っただけに過ぎなかったのだ。』

「旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。たとえ死であってもだ。人生と同じようにね。」

考察・感想

豊かなSF要素

物語を彩るのがいくつかの非現実的な特殊能力です。ワンピース的な世界観。壁抜け、読心術、飛翔、未来予知と様々登場します。その他の世界観は、数百年前の世界を忠実に描かれているだけに、対照的であり、作品のアクセントとなってます。「もしかしたらできるかも」と思ってしまうような能力もあり、なんともユーモア溢れる作品でもあります。

ラゴスの旅の目的

この物語で最も魅力的な点の一つとして、ラゴスの考え方の移り変わりがあると思います。冒頭からあまり急いで旅をすることなく、寄り道していることから旅好きであることの本質は変わっていませんが、若い頃〜中年にかけては、一応目的を持っているように思います。先祖の叡智を学ぶ、デーデと再会するといった具合に。ですが、最後に悟るのだった。

『旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。たとえ死であってもだ。人生と同じようにね。』

こんな視点で物事を考えられたら、素敵に過ごせそうですね!「っていうか旅に出かけたいっ」と単純にそう思わせてもらえました。

『人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を当てさえすればそれでいい筈だ。』

未来への警鐘

ラゴスは自由に旅をすること以上に大切している価値観があった。

『現在のこの世界に、電気という科学を持ち込んでいいのだろうか。』

南方の地に降り立った、先祖は高度すぎる文明がゆえに間も無く滅んだ。先祖が残した本を読む中で、高度な文明の登場が世界にとって不利益であると悟るのだった。
近い将来に考えられる、人工知能が進歩した世界、地球温暖化の進行した世界とこの物語の高度がゆえに滅びた文明はどこか重なる部分がありました。ラゴスが歴史を学ぶことを重んじていましたが、過去を顧み、未来につなげる大切さを本書を通じて伝えているように思います。急速な進歩は止めることはできないですが、過去を顧みながら未来に向けて歩むことが一人一人が未来のためにできることだと感じました。

ドネルの正体

ラゴスが氷の女王を求め、物語の最後に立ち寄った先で世話になる老人ドネル。『実は、わたしは、若い頃あちこちでだいぶ悪いことをしている。それで行き場がなくなって、こんなところに居るわけです』『どこかで、お会いしませんでしたかね』とラゴスに話す。『そうなのだよ。どこかで会っているのかもしれないね。わたしもあちこち旅をしたから』
これまでの旅を振り返って、読み返してみて登場人物でそれらしき人居たかなと思って読み返しました。
以前ライブドアでのブログの記事「旅のラゴス」を読んで(内容・解説)では、昔悪いことをしていたことからという単純な理由で、デーデの夫となった男「ヨーマ」ではないかと思っていました。今回読み返してみて急浮上したのが「たまごの道」で登場したタリアの息子であり、「たまごの道」の物語冒頭に登場する盗賊の一人が「ドネル」ではないかと思いました。

『おやおや。あんたは自分のことを知らないようだね。でも、今まで、他人から信用されたり、はじめての人間から、普通他人には言わないような秘密を打ち明けられたことはあるんだろう』「やっぱりあんたは自分のことを知らないんだよ。あんたはね、自分が正直でいい人間だということを知らない間に撒き散らすみたいにして周囲の者に教えてるんだよ。それを感じ取れない人間だっているんだろうけどね。でも、たいていの人間はそれを感じることができるんだよ」

タリアとラゴスとの会話シーン。ドネルは突然、北国の民家に現れたラゴスを顔を覗き込んだだけで、心を許したことから、ドネルはタリア譲りの人を見抜く力があったのではないかと想像を膨らませてしまいました。

本書との思い出

口コミで爆発的な人気になった一冊で、その影響をもろに受けました(笑)
物語としても、発行時期としても、現在とは異なるため、第一印象では、読むのに手こずるかなっと思っていました。まあそれも面白いかなっと思って。しかし、すらすら読めるんです!20年以上の時を経て人気を博す理由は、旅に憧れをいただく人が多いからだと思っていましたが、作者の巧みな表現力で時代の違いを感じさせず、読みやすい構成になっていることも相まってのことだと感じました。連休のひとときに気軽にタイムトラベルできる一冊です。ぜひ、手にとっていただけたら幸いです!!