*/バリューコマース */

「カエルの楽園」考察・感想編

2020年3月12日

目次

カエルの楽園

日本の社会問題の一つである国防問題についてカエルの世界に置き換えて描かれている一冊です。累計50万部を突破している話題本の考察・感想を綴らせていただきます。

作家紹介

作家名:百田尚樹
生 誕:1956年2月23日
出 身:大阪府大阪市
代表作:永遠の0、海賊とよばれた男、夢を売る男
その他:放送作家や作家であり、討論番組などでもお馴染みです。

あらすじ

国を追われて、命がけの旅路の末、カエルのソクラテスとロベルトは、争いのない平和な国「ナパージュ」にたどり着く。過去に、大戦に敗れた以来、「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」の項目を遵守する思想「三戒」と謝りソングを重んじることで、平和が保たれていると信じる親切で、優しい「ナパージュ」のカエルたち。そんな「ナパージュ」をカエルの楽園と思うのだった。
しかし、三戒で守られているはずの「ナパージュ」に侵入する別種のカエルが現れる。一時は退去するも再び現れ、徐々に支配化を広めていく。「三戒」賛成派が話し合いで解決を試みるもうまくいかず。「三戒」による平和は偽りであった。侵入するカエルに対して対抗するもの、「三戒」の撤廃を試みるものが現れるが、「三戒」賛成派が押さえ込み、一部を処刑してしまう。「三戒」への忠誠心を別種のカエルに示すものの、侵入はエスカレートし「ナパージュ」を支配してしまう。そして、「三戒」賛成派は奴隷とされ、反対派は処刑された。

考察・感想

登場する比喩

この作品は、日本の現状と、想定される未来が描かれた一冊です。登場人物について比喩表現が登場します。一部紹介します。他にも多くのことが比喩されています。これなんだろうなと想像しながら、調べながら読み進めるのがオススメです!

ナパージュ=日本  ソクラテスたち=外国人  ハンドレット=百田尚樹  デイブレーク=朝日
ヌマガエル=朝鮮人  ウシガエル=中国人  スチームボート=アメリカ  ハンニバル兄弟=陸海空軍  三戒=日本国憲法

現在と最悪の未来を描く

この作品で描かれている世界は、尖閣諸島問題、拉致問題、沖縄米軍基地問題、メディアのあり方など、日本の現状の様々な問題点と重なる部分があります。描かれた未来は、平和を愛するはずの「三戒」の賛成派が反対派を排除、「ナパージュ」が支配されるという過激で過剰な表現がされていますが、敢えてそうすることで、それらの問題について、真剣に想像していただきたいという作家の願いが込められているように思います。カエルの世界で、読みやすい文体で表現することで、なんとなく避けがちな国防問題について考えるきっかけを与えてくれる仕掛けはさすがだと思います。

わたしたちの使命

物語を通じて、「三戒」の神格化、スチームボードとの協定破棄、武力の放棄等で、「ナパージュ」が支配される結末になりますが、だからといって、「三戒」を破棄したりすることが正解であるというわけではないことを念頭に置く必要があると思います。作家の百田尚樹さんを神格化してしまえば、デイブレークの演説=「百田尚樹さん」となりかねません。ソクラテスとともに「ナパージュ」に訪れるロベルトが次第に、「三戒」を神格化する思想になっていきますが、これは、メディアの恐ろしさを如実に表現しているように思います。

俺は冷静だよ。お前には前から言おうと思っていたことがあるが、ここではっきり言う。三戒を疑うようなお前とは、もう口をききたくない!

ソクラテスのように、第三者の視点で、双方の面から物事を捉えた上で、自分なりに考えることが作者の最も訴えたいことであり、わたしたちに必要なことだと思います。この作品では、ヌマガエルやウシガエル、スチームボートの視点が皆無であり、侵略や、連れ去りといった表現(敢えてそうすることで、本質を際立たせる狙い)がされています。そういった問題についても、ヌマガエルらと、「ナパージュ」双方の面から問題点について考えることでより本質をつかむことができるように思います。また、双方の歴史という視点からも物事を捉えることが重要であると思います。

この国のカエルたちは三戒については詳しいのに、昔のことになると、知らないことばかりだね

 

本書との思い出

想像に容易い形で、複雑な国防について考えるきっかけを与えてくれました。物語は残酷な未来を赤裸裸に描いており、ハッピーエンドではありませんし、「三戒」賛成派が繰り返し、自分たちを正しいと誇示する姿は、腹立たしささえ感じてしまいました。しかし、本書を読んで以降、北朝鮮問題などに関心を持てるようになりました。ぜひ手にとっていただけたらと思います。