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「影裏」考察・感想編

2020年3月12日

目次

影裏

直近の2017上半期芥川賞受賞し話題になった「影裏」の意味、作者の思いについて考察・感想をまとめてました!

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作家紹介

作家名:沼田真佑
生 誕:1978年10月30日
出 身:北海道小樽市
その他:デビュー作である「影裏」にて文學界新人賞、芥川賞受賞。第二作が待ち遠しい作家です。岩手県在住で、「影裏」にその世界観が描かれています。

あらすじ

出向先の会社の同僚であり、川釣りや杯を酌み交わす友人の日浅。今野は『何か大きなものの崩壊に脆く感動しやすくできていた。ものごとに対し、共感ではなく感銘をする』ような感性の持ち主である日浅を唯一の友人として接していた。だがそんなありふれた日常は長くは続かなかった。日浅は会社を退職し、再就職を果たすのだった。今野は、日浅との交流なき退屈な日々を過ごすのだった。ある時、突然の再開を果たしたが、今までの面影がなくなりつつあった。『古風なペイズリー柄のボトルシェイプタイはからかうこともできそうだったが、光るワックスでつんつん逆立てた鶏冠のようなヘアスタイルは笑えなかった。もう十年以上床屋に行かない、髪の毛なんか、本来は自分で切るもんなんだと豪語していたかつての日浅の、ラフな自由業者風の面影はどこにもなかった。』。その後、また突然現れ、営業ノルマ達成のため協力をしてくれないかと頼まれ協力する。そして3度目の再開で川沿いで飲んだ時、日浅のかつての姿は完全になくなっていた。
日浅との関係が途絶え、しばらく経過したのち、東日本大震災を追憶する今野。その後、日浅が巻き込まれた可能性があることを知り、捜索することに。そして、日浅の父と話をする中で、日浅の過去を知る。

考察・感想

豊かな表現

岩手の豊かな自然、川釣りの描写は、目に浮かぶように鮮やかに描かれています。また、豊かな表現力も魅力的です。

『長くモノトーンで統一されていた風景に、水仙が連翹が黄色味が加えられた。』

『華やかな映画音楽だったので、演奏が終わると部屋から一色色が抜け落ちたように』

「影裏」の込めたメッセージ

作者は「普通とは何か」というメッセージをこの作品で問いかけているように思いました。

今野は、罵られた挙句、お金を騙し取られたかもしれない日浅の捜索を行う。そして、日浅の父と話す中で、日浅の過去を知るものの、日浅への思いは変わらず、捜索願を届けるよう懇願し続けた。
なぜ今野は、そこまでするのかを考えてみると、日浅の『何か大きなものの崩壊に脆く感動しやすくできていた。ものごとに対し、共感ではなく感銘をする』性質や、飾らない所などが、今野自身の男性と付き合っていたり、釣り仲間とろくに会話ができない姿と重なる部分があったからだと思います。
個人的には、日浅の父と同様、日浅との関係を絶って日浅を「変人」とし、自分を「常人」するのが普通だと思いましたが、二人の関係性は変わることがなかった。日浅自身の行為が本当ならば、許されることではないですが、常識や、前例、慣習、思い込みといったことから、物事を判断することは決して「正しい」ことではないように思いました。

「影裏」とは

影裏(影)=細部は明確でないものの輪郭がはっきりしていること。心に思い浮かぶ姿。表立って見えない人や、物の暗示などなどの意味があります。

・細部は明確でないものの輪郭がはっきりしている

でんこう-えいり【電光影裏】
人生は束の間であるが、人生を悟った者は永久に滅びることがなく、存在するというたとえ。▽「電光」は稲妻のこと、「影」は光の意。「電光影裏春風を斬る(稲妻が春風を斬るようなもので、魂まで滅し尽くすことはできない)」の略。中国宋そうの僧祖元そげんを元げんの兵士が襲って殺そうとしたとき、祖元が唱えた経文の一句。

日浅との関係を絶縁していた日浅の父の家で見かけた文字に対しての今野の反応。

『電光影裏に春風を斬る。不意に蔑むように冷たい白目をこちらに向ける端正な楷書の七文字が、何か非常に狭量な、生臭いものに感じられた。』

今野はおそらく、人生を悟ったかのような態度の日浅の父の姿に狭量さと生臭さを覚えたのだと思います。このシーンに作者の「普通とは何か」という問いかけが込めているように思います。
作者の問いかけは、「細部は明確でないものの輪郭がはっきりしている」であるように思います。

・心に浮かぶ姿
今野が思い続ける日浅の姿を表しているのだと思います。

・表立っては見えない人や、物の暗示
今野や日浅が人知れず抱えていることや、本質を表しているのだと思います。

東日本大震災を描く

今野が、震災の津波に襲われる日浅を想像するという読者はたまた全国民が想像に容易い描写と、震災の影響による商品の品薄や疎遠だった知人からの連絡、停電に備えた生活などの知られてない、忘れられている描写があり、ある意味、前者が光で後者が影(表立っては見えない)のように感じました。

本書との思い出

この作品は、まさに「細部は明確でないものの輪郭がはっきりしている」作品であると感じました。鮮やかな自然描写という名の輪郭と、作者の問いという名の細部。正直なところ、ブログで伝えたい思っていることを表現するのが困難でした。ここ最近の読んだ本の中で一番悩んだ一冊でした。十人十色でこの本に対する思いがあるはずです。ぜひ自分自身で確かめていただければと思います!!

 

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