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「どうしても生きてる」生きてる理由はなんだろうか?

2020年3月11日

何者桐島、部活やめるってよなど、これまでに何冊も読ませていただいた朝井リョウさんの最新作。久しぶりに朝井さんの作品に触れることになりましたが、常に最新のトピックが盛り込まれており、現代を強く感じる作品になっていることを改めて感じます。単に現代を描くだけでなく、時代が進むことによって生じた小さな小さな歪みを捉えて、大きく見せたり、身近に感じさせたりと、これぞ「朝井リョウ」という一冊になっており、学びというよりは感じさせられる、考えさせられる面白さが詰まった格別な一冊です。

目次

どうしても生きてる

死んでしまいたい、と思う時、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。

家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるだろう。

あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。

社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。

尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。

性別、容姿、家庭環境。生まれた時に引かされた籤は、どんな枝にも結べない。

朝井リョウ

1989年生まれの岐阜県出身作家。桐島、部活やめるってよで第22回すばる新人賞受賞しデビュー。何者で第148回直木賞受賞。個人的な印象としては、最先端のトピックスを絡めた表現や問いかけにはいつも身につまされます。

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時代を捉えた視点

短編6作が収録されている形式である本作。これまでの朝井リョウさんの作品をタイムリーに読んだ方なら感じると思いますが、常に時代の流れを汲んだ物語になっていることが一つの魅力です。何者では、当時の先端ツールのツイッターが登場し、就活生とツイッターが生み出す人間の本質というか、醜い部分を表現した作品に衝撃を受けたことを思い出します。

マッチングアプリ、電子小説、YouTuber、ライブコマース、ラップ、演劇、インバウンド、地震、派遣、企業不正、高齢化、晩婚化等々。ある種、小説らしさ=昭和のような時代を思い浮かべがちな自分としては、常に「現代」にフォーカスした作品作りがなされている著者のスタイルはいつも驚かされます。「現代」を取り入れつつ、時代変化に伴う不透明感に揺れ動く人々の想いが絶妙に描かれているのが圧巻です。

生きてる

物語の登場人物それぞれに人間味を強く感じ、時には理想のような印象を受け、時には、憤りを感じ、時には同情を覚え、時には、諦めを抱く。そういった様々な感情に誘う緩急や本性を暴いた表現が絶妙です。ふと消えたくなる気持ち、後悔の念、将来への諦め、惰性の日々、地位や格差、価値観、運命、年齢、性差。誰もが大なり小なり感じたことがある感情に良し悪しや結論を出すことは難しいですが、どの登場人物も「生きてる」。「正直でいられれば」「人との繋がりがあれば」「希望」と同様に「途方に暮れる」「死にたくなる」「絶望」ことも「生きてる」原動力になりうるのかもしれないとポジティブすぎるかもしれませんがそう思いました。「生きている」ではなく「生きてる」という「い」がないだけで必死さ、苦しさ、懸命さ、といった想いが迫ってくるような点は言葉の深さを感じます。